イギリスのユーロへの参加と売買動向
英国はまだユーロには参加していない。フレア政権はこれまでユーロ参加に前向きであったが、財務省によるテストの結論として、英国のユーロ参加はその時期ではないとした。 2005年でのフレア首相の意見は、「英国こそが欧州の中心にあるべきだと信じている。英国がユーロに参加するかどうかは、経済上のテストによる。もし経済にとって良くなければ参加しない。政治的には参加する可能性が高いが、経済上の課題を満たさなければならない」と、少し距離を置くトーンに変化した。
実は2003年6月に、英国財務省でユーロ参加についての経済テストをした。そのテストの結果が2003年6月に発表になった。6月9日にユーロ加盟に関して、ブラウン財務相から発表される予定であったが、その発表前に財務省からEUR/GBPの見通しが0.75~0.85とされたことで、GBPは急騰した。その発表前には、GBPの動きを先取りするように、中東筋からの買いが入ったと市場で噂が出て、9日には0.7003までEUR/GBPが売られた(GBPが買われ、EURが売られる)。しかし、この事前の発表でEURが急騰し、GBP ・ ロングの人たちが損切りの売りを入れるなど、多くのディーラーが傷ついた。9日のEUR/GBPの高値は0.7223であった。
英国のユーロ参加の動きが大きく阻害されたのが、2005年5月29日のフランス、6月1日のオランダでのEU憲法批准に対して、国民が否定したことである。すぐ後には、イタリアのリラがユーロから離脱するとの議論がイタリアから出るなど、EMU不安の状態が発生した。こうした動きを受けて、6月にMPCメンバーのニッケル氏が、「小規模で開かれた経済において、生産と雇用は価格競争力に対して非常に敏感である。
通貨統合下での大規模経済においては、競争力の改善に対する生産の反応は非常に鈍い。これが単純に、まず改革を行おうというインセンティブの減退につながる」と述べ、ユーロ圏経済での問題を指摘し、英国のユーロ参加がさらに遠のいたことを示唆した。 EUR/GBPは5月27日の0.69044から6月23日の0.66114まで4.2%と大きく下落し、ユーロが売られた。